書評: 駅をデザインする

僕は仕事柄全国を鉄道で旅をしていて思うことがあるが、日本の駅は大抵醜い。東京駅や、新宿駅に見られるようにそもそも構造が人に親切でなく(東京駅などまだ新線増設でさらに駅構造が立体化される!)、それに輪をかけるように不快な空間設計、広告なのか何なのかわからない案内・誘導サインにあふれていて、一体自分がどちらに向かっていって良いかわからない。誰でも大きなターミナル駅で迷った経験の一度や二度あると思うが、それはあなたが悪いわけでも田舎から出てきたお上りさんだからでもなく、駅が悪いのだ。まさしく、列車に乗ってもらうのではなく、乗せてやるという鉄道会社の意識そのものが駅自体に現れている。
そうした酷い駅の中でも感心するような駅が有り、みなとみらい線各駅や、改装後の横浜駅は迷うこともないし、比較的快適だと思っていたら、著者が案内サインや空間設計で関わった案件だった。
本書は、過去の営団地下鉄の案内サインの基本設計(東京メトロになってから醜いけど)やみなとみらい線、つくばエキスプレスで同様の仕事を行い、公共交通機関の案内・誘導サインや空間設計に関わって来た著者による、駅設計への提言を一般向けに記した物だ。
著書の中でも述べられているが、都市のターミナル駅を鉄道会社にのみあるいは会社毎に管理、設計させることに社会的な資本の損失がある。駅周辺の都市再開発が行われることが多いが、駅その物がそこに組み込まれることは先ず無いが、駅そのものの快適さや構造が都市計画自体に組み込まれ、都市と駅での思想が統一されたデザインの上に成り立つことが理想だろう。ダンジョンなどといって面白がっている場合ではないのだ。それは単純にこの国の文化的な後進性の結果でしかない。
今後、高度成長期に建設された様々な公共施設が(それには駅舎も含まれるはずだが)老朽化し、大規模な補修や作り直しが必要となってくる。そうしたときに本書で指摘された視点や考え方が反映され、つまらなくて苦痛な通勤の通過点でなく、この国の文化を表すような空間になってくれれば良いと思う。そうなれば僕くの出張も少しは楽しくなってくるはずだ。

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