不機嫌な日本全国コストセンター化(その1) – Tech Mom from Silicon Valley
簡単に書いてしまえば、鎖国の後遺症。いや今鎖国なのかもしれないけど。
鎖国というのは外国との間で富の移動がほとんどないので、基本的に長期的に見れば超が付くくらい低成長世界だ。ようはパイが増えないゼロサムゲームをずっと続けていくわけで、そういう中では現状秩序を維持した方が最大多数の最大幸福を得やすい。むしろその秩序を乱し、ゼロサムゲームプレーヤー間の富の配分を変えようという勢力は、ゼロサムゲームの中から既得権益を守ろうとする勢力から徹底的に排除される。江戸時代に行われた「改革」の内容を見れば、このゼロサムゲームの勢力バランスを元に戻そうとする作業だったことも解ると思う。
そんなことを数百年にわたってやってきたこの日本では、今現在においてもそのときの価値観があちこちで有効なんだ。勤労に対する喜びを至高のものとし、それによる金銭を卑しいものとする思想は実際には江戸時代に完成された思想だ。そういう江戸時代のような世の中では、イノベーティブな上昇志向は鎖国的なその秩序を乱すものでしかないので、排除圧力が大きくかかる。田沼意次の失脚にはそういうところが見える。特に、今はこの鎖国していた江戸時代と同じような低成長であり、金融もその他も今の鎖国的政策を続けていれば江戸時代のような気が重い時代が続いていくのかもしれない。
参考:
日本を創った12人〈前編〉 (PHP新書) 堺屋 太一 PHP研究所 1996-10 |
日本を創った12人〈前編〉 (PHP新書) 堺屋 太一 PHP研究所 1996-10 |
コメント
>江戸時代のような気が重い時代が続いていくのかもしれない。
江戸時代は大航海時代で荒れ狂うその当時の世界で唯一の平和な国家(状態)だったというのも事実、だけど現代は鎖国しようがしまいが強引に扉を開けられてしまう世界なので、そんな悠長な事は言ってられない。
明治維新並のインパクトを与えて国民意識を変えて行くしかないと思うが、方法はわからん(笑)
>ゼロサムゲーム
所詮我々のやってる仕事ではwin-winなんて夢のまた夢なのでしょうか。
局所的にWin-Winは成り立つかもしれませんが、この国の社会全体としてはどうでしょうか。社会階層間すべてでWin-Winがうまくいく方法は今現在ではあり得ないのではないでしょうか。また、そのためにはやはりパイ全体を大きくするしかありませんが、この国の成長戦略がよく見えません。
興味深い見方ですね。いろいろ考えさせられます。
ただ、アメリカの経済情勢や世界との関係、および今後50年ほどの日本の人口減少傾向などを考えると、少なくとも今後50年ぐらいの日本(およびアメリカ圏を中心とした世界)は経済的には拡大しない(低成長)状況になる可能性があると考えます。もしそうなったならば、鎖国の後遺症(低成長で安定できる知恵)がプラスに働く可能性もあるのではないでしょうか。
それと、「江戸時代のような気が重い時代」と書かれていますが、たとえば『逝きし世の面影』という本を読むと、江戸時代は必ずしも気の重い時代ではなかったのではないかと思われます。この本の真偽やぼくの感想は保留したとして、気が重い時代が続くかどうかは検討の余地があるかもしれません。
Amazon.co.jp: 逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー): 本: 渡辺 京二