自衛隊・防衛省(庁)の調達に関する考え方は、基本的にいざとなったらアメリカに防衛してもらう、もしくはそもそも戦争を想定しないのではないかと思える。なぜかというと、この国の軍隊は表向きの装備品目はよくても、戦争を続ける能力が欠如しているからだ。
自衛隊の装備は軍事パレード的な装備品種類の見栄えはあるが、実働戦力として本当に戦力と言えるのか疑問になってしまう。兵員の個人装備の支給内容に始まり、兵站の備蓄、兵站システム、戦時医療体制を含む後方支援体制、表の装備の華々しさに比べあまりにもおざなりされてきてないだろうか。戦争は現実なので、弾と食べ物は途切れないように前線に送り続けなければならないし、兵隊は実際に傷つき血を流すのであって、彼らを医療拠点まで運び、治療し、前線に送り返さなければならない。かつてこれらをできなかった軍隊がこの国には存在して、そしてそれがこの国にどういう結果をもたらしたかは、皆さん重々ご承知のはずだ。
本書ではこの問題について、具体的な例を挙げながらいわゆる私のような軍事ヲタでない、普段新聞やニュースを見ている普通の人でもわかるように解説し、ある程度の処方箋を提示している。
もはや冷戦が終了して20年が過ぎ、9.11からも10年近くなってきた。その中で極東や環太平洋地域においては、中国が経済発展し、軍隊も近代化しつつあり、アメリカと中国の間で「戦略的パートナーシップ」が言われ始める中、我が国の地政学的な戦略的価値は低下しているのであって、アメリカが我が国を防衛する動機は冷戦期ほど十分ではない。かつてと同じルールでのゲームが展開されているわけではないのだ。我が国の防衛関係者もルールが変わったことを速やかによくよく理解して、実行力のある防衛力を持てるよう装備品調達についても多くを学び改善してほしいのが私たる一国民の願いだ。
コメント
拙著ご紹介ありがとうございます。