"The Billionaire Who Wasn’t" Review
かれは、事業には興味があっても、お金には興味がなかったのだという。「10億円以上の財産なんかあっても意味はない」「金は墓場に持っていけない」「財産が多すぎるのは家族にはかえって重荷だ」。そして、そのお金を最高に使うにはどうしたらいいかという視点の鋭さ。慈善だから無駄遣いでもいい、収益性や効果を考えなくてもいいというありがちな発想に、かれは異を唱える。慈善だって事業だ。なるべくお金が生きる援助をしよう。お金の使い方を知っている人を見つけて、(匿名を除いて)無条件でかれらに任せよう――ビジネスと同じ明快な論理が、慈善にも適用される。ぼくはかれの注ぎ込んだお金よりも、このビジネス的視点のほうが活動全体の中で重要じゃないかとすら思う。
おもしろすぎる。よくまあこんな変な人がいたものだ。かれが匿名をやめようとしたのも、単に寄付の規模が大きくなりすぎて、隠しきれなくなってきたからだそうな。その本書の唯一不満のようなものといえば――なぜ? なぜかれはそんな行動を? それだけはわからない。もとからそういう性格だった、とかれは言うだけ。「お金は人を変えないけれど、人の本性をあらわにするのだ」とフィーニーは言うそうだ。
本書を読んで、読者も考えるだろう。自分の本性とは何だろうか。そして慈善、ビジネス、財産、成功って何だろう――本書は必ずや、それを考えるきっかけとなる。すぐにでも翻訳して、一人でも多くの日本人に読ませるべき本だ。
で、翻訳したようだ。
無一文の億万長者 | |
山形 浩生 守岡 桜
ダイヤモンド社 2009-02-14 |
非常に楽しみ。
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