書評 : 大規模電力貯蔵用蓄電池

電気は貯められないのか?

福島第一での事故以来スマートグリッド議論や電力の制度設計、あるいはそれらがごちゃ混ぜになって技術論なのか、制度設計の話なのかよくわからない議論が始まっているが、そのような中でよく出てくるのが「電気は貯められない」という議論だ。では本当に電気は貯められないのだろうか、我々は以前より電気を垂れ流しにしてきたのだろうか。

実際にはそうではない。

現実問題、電気はそのままでは保存できないのは確かなことであるので、電気を保存するためにはエネルギー変換が必要となる。従来我々はこれを電気を位置エネルギーとして保存してきた。これは揚水式水力発電所と呼ばれる物がこれに当たる。

ただ、これは最近の議論でも明らかになってきたように、立地として高低差が必要であることから山間地に限られ、高低両方にダム建設などによる大きな貯水池が必要でありこれ以上の増設は難しいし、最終消費地から遠く送電ロスが効率的な面で悪い方に加わってしまう。また、規模として比較的大型になるので、スマートグリッドで要求されているような細かな電力調整の電源としては向いていない。基本的に揚水式発電所はベース運転と呼ばれる定格容量での発電を続ける原子力や、石炭火力の夜間余剰電力を蓄える物だ。

これから求められるスマートグリッド世代の電力の蓄電方法は、最終消費地に近い場所や再生可能エネルギーを利用する電源に近い場所に設置ができるほど設置が容易で、比較的コストが低く、運用のしやすい電源である必要がある。これらの要求に合致できる蓄電方法で今現実的な物は二次電池を使う方法となる。

本書では今現在有望とみられている二次電池の種類とその構造について説明し、将来展望をまとめている。

一通り読んだ感想としては、基本的にNICTの構想図で配電変電所に設置されることが計画されているような比較的大きな蓄電用の二次電池としてはすでに実績のあるナトリウム硫黄電池やレドックスフロー電池の使用が有望だと考えられる。

また、町内や家庭での需給調整や受給平滑化や、主に過程やビルに設置されたソーラーパネルによる再生可能エネルギーの出力安定化の電源としては、なじみのあるリチウムイオン電池やニッケル水素電池が適しているように思えた。

今現在の我々は「電気は貯められない」のではなく「電気を貯めていない」のである。これは貯める設備を建設して維持するより買った方が安いという現実があるわけだけど、将来的なエネルギーコスト全般の高騰によって変わってくるだろうし、制度設計や政策決定により、蓄電により電力効率化を後押しすることもできるだろう。

(ブクログより転載)

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