とりあえず今スマートグリッドについて知りたいので何か読みたいというのであればこの2冊だと思う。
一冊目は政策課題としてスマートグリッドを扱ったもの、二冊目は純粋な要素技術解説(の目録)だ。他の書籍が一般的なところを狙い図版を多く使った中途半端なものになってしまっているのと違い、これらはそれぞれの方向に正面から扱っており、それぞれの点で満足できる内容になっていると思う。
各書評は自分のブクログから転載した。
スマートグリッドは、温暖化ガスの排出削減というよりも、近い将来の石油や天然ガスの枯渇(この枯渇とは燃料として経済的な価格で石油を入手できなると言うこと)に備え、エネルギー源の分散化は避けて通れないのだが、代替エネルギーの主役と見なされている自然エネルギーは、自然任せの部分があるが故に本質的に不安定であり、その不安定さに電力網(グリッド)を対応させるための手段がスマートグリッドである。
従って、スマートグリッドとは単に送電網のアップグレードでもなければ、家庭に太陽パネルをつけてオール電気化することだけではなく、中長期的に継続される経済政策であり、持続可能な文明社会を構築する上での新しい社会設計項目の一つである。
本書は、そういった視点でスマートグリッドを扱っており、スマートグリッドの技術的な詳細と言うよりも、スマートグリッドに関する各国での現状と政策をまとめ、なぜ今スマートグリッドなのか、その上で我が国がどうするべきか政策提言を行っている。
ということで、本書は単に技術論でなく、社会的な、あるいは経済的な側面でスマートグリッドについて把握しておきたい方に特におすすめする。
これは表題の通り、スマートグリッドを構成する技術要素とその標準化について書かれている。
基本的には米国でのスマートグリッドの動きを見ながら、そこでの標準化と我が国は技術的な点で我が国がどうするべきなのかについてまとめられている。
また、本書のもっとも特徴的な点が、NISTが発行した「Framework and Roadmap for Smart Grid Interoperability Standard Release 1.0」の翻訳が掲載されている点である。スマートグリッドの要素技術の標準化はアメリカがIEEE中心に行われているのに対して、EUはISO/IECでの標準化を期待しているが、実際の作業、世に出されている製品としてはIEEEの方が進んでおり、その中心的な作業をになっているのがNISTである。従って、このNISTが発行したペーパーが標準的な基礎資料としての位置づけになることは間違いなく、今後この分野に関わる可能性のある技術者や経営者は目を通された方がいいと思う。
コメント
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