CNET Japan Blog – 江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance:脳と記憶についての序章
我々は多くの場合、「情報」というものを「知識(過去)」とイコールにして考える傾向にある。しかし、現在の脳科学は過剰な過去に押しつぶされないように記憶を消去するメカニズムにも及んでいるということは触れておくべきだろう。
人間の記憶メカニズムで一番優れているのは、インパクトの低い、繰り返されない情報を忘れることによって記憶の余裕を常に持ち続けることだと思います。S.ホームズが言うように、新しい知識を得るために記憶の引き出しを開けておくのです。たぶんこの仕組みが人類を生き残らせてきたひとつの特徴でしょう。(と書いて言い訳しよう)
脳に対する医学、分子生物学、生理学、生化学よりのアプローチにより脳の働きの科学的解析がすすでいます。利根川進博士と村上龍氏との対談では、利根川博士は、脳の構造や思考のメカニズム解析が進むことにより、心理学がなくなるとまで書かれていたように思います。(対談が手元に無いので自信なし)
またこのような研究が可能になったのものエレクトロニクスの進化による計算能力のインフレーションがあったからです。
これらの研究は脳や、神経系に先天的障害をもたれている方に対して画期的な治療方法を提供できるようになるかもしれませんが、その一方で、薬剤を使った第三者による精神のコントロールが可能になるかもしれないなど、当然技術何で新しいリスクを抱えることになります。(そして新しい事故も発生します。)いつだって技術は善悪両方に平等なのです。
コメント
TBありがとうございます。面白い指摘ですね。
私は医学的アプローチと心理学は人間科学発展の両輪だと思います。SFや時代背景などの物語性こそが科学にコンテキストを与えて発展を促してきたように、心理学のようなポピュラーサイエンスはストーリーテリングの手段として、一般市民の共感によって脳科学を方向付けるものとしての地位を失うことはないだろうと。
心理学や精神分析を場外乱闘でも何でもアリの文学だと定式化するならば、心を脳の見地から説明するスタイルは、ゲームのルールとしてフェアに感じられ面白そうだということなのでしょう。
テクノロジーは好むと好まざるとに関わらず進歩するし、それまでの時代には存在しなかった新しい善悪の概念を生み出す、という点は全く同感です。
コメントありがとうございます。
ヒトゲノムの解析が一段落した今、脳に対する研究が今一番エキサイティングな分野なのかと思います。脳に対する研究はいずれは計算機の世界にも何かしらの強い影響を及ぼすことは間違いないので、理科野郎としては注目しています。