書評: いちばんやさしい オブジェクト指向の本

井上 樹 / 技術評論社
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タイトルに偽りなし。本当に「いちばんやさしい オブジェクト指向の本」。

ソフトウェア技術書における今年初めてのホームラン。

この本の良いところ

  • 読みやすい
  • オブジェクト指向の応用ではなく、正面からオブジェクト指向を説明していること。特に現在の視点で説明していること。
  • 技術史的な順を追ってオブジェクト指向の必然性を正しく伝えていること。
  • オブジェクト指向分析と、オブジェクト指向プログラミングの違いを平易に説明できていること。
  • 参考文献・関連書籍として、読者が学習を継続していく上で次に読むべきものを示していること。
  • 親書なので価格が低い
  • 本の厚さに圧倒されない

残念なところ

  • もっと読みたい。

この本の構成と概要

この本の章立ての構成とその概要は以下のようになっています。

まえがき 基本なくして応用なし

この前書きだけでも立ち読みしよう。(そして購入してしまえ)

第1章 それはシリコンバレーから始まった

現在のオブジェクト指向の誕生がアラン・ケイのDynabook抗争から始まっていることから始まり、Java UMLという現在の状況まで簡単に俯瞰し、昨日今日突然現れたものでないことを説明しています。

第2章 ケーキとDVDソフト

オブジェクト指向の基本的な概念について、読者が理解しやすいように説明しています。最後にオブジェクト指向の本質を次の二つの文章にまとめています。

  • 適用する対象を、オブジェクトの集まりとしてとらえる
  • 適用対象が持つすべてのストーリーを、そのオブジェクトの間でのやりとりに置き換える

第3章 プログラミング進化論

機械語から、アセンブリ、データ型の発明、構造化手法、ユーザー定義型によるデータ型の抽象化、モジュールといったプログラミング言語と手法の発展、それが抽象化の拡大であることを示しながら、その発展の結果としてオブジェクト指向プログラミングが生まれ、それが必然であることを、簡単にわかるように説明しています。

第4章 抽象化と分割の歴史がもたらしたもの

前章をふまえ、オブジェクト指向プログラミングの詳細について解説しています。

第5章 ショートケーキはなぜショートケーキなのか

認知心理学の視点でオブジェクト指向分析についてわかりやすく解説していて、また、オブジェクト指向プログラミングと、オブジェクト指向分析の違いも際だたせています。

第6章 よくあるQ&A

本当によくあるオブジェクト指向に対する疑問点に答えています。

参考文献

関連書籍

この本は親書であり、実際の場面における詳細についてはあまりふれられていません。しかしながら、ここにあげられた参考文献、関連書籍を順次呼んでいくことで、読者はより深い理解を得られるように道筋をつけています。

あとがき

さいごに

新書ということもあって、食い足りないと思う方もおられるかもしれませんが、今までのオブジェクト指向の教科書はどれも分厚く、ちょんと説明しようとするばかりに難しい日本語で概念が記述されていて、おおかたの読者を挫折、遠ざけてきましたが、新書版にできるだけ平易な日本語で短いページにまとめられたこの本は画期的だし、本来もっと前にあるべきものだったような気もします。

また、これだけの内容をこのように平易にに短くまとめられるのは著者のオブジェクト指向に対する並々ならぬ知識と理解に裏付けされたものであり、その点にも感服しました。

 

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